絶滅危惧種

 長く音楽活動を続けていると、年々、演奏場所や生の音楽に触れる機会が減少してきているということを実感します。これは一言でいうならば、音楽における社会的資源の払底ということでしょうか。一方で配信などの方法は増加傾向にあるようです。

 配信による視聴はオーディオ同様、音楽を楽しむ一般的なスタイルの一つではありますが、私は音楽の現場における体験の共有や、精神面、感覚面、身体面など人間的な経験の部分も大切にしたいので、これらを含めた各要素の均衡が保たれた状況が望ましいと思っています。

 昨今の社会状況に鑑み、先述した減少は受け入れざるを得ません。国内では人口減少もあり地域社会は現実に衰退しています。これでは文化の発展も望めないでしょう。中でも草の根的な地域の音楽業界が経済面で成り立たなくなっているということも深刻で、その負の影響が様々な方面に波及していくことを懸念しています。

 考えてみれば、コストや手間のかかることを減らしていくと、例えば音楽の場合、人間が演奏しなくても良いということになり、ついには生演奏も不要となることでしょう。実際、NHKのど自慢では本年度からカラオケとなってしまいました。いずれ歌も仮想人物と人工知能に取って代わられ、未来の世界では、「昔は歌も楽器の演奏も人間が行っていたんだよ。」と言われるようになるのでしょうか。

 全ては諸行無常故ですが、いずれにしても、音楽活動が希少なものになってしまっている現状には抗う術もありません。また、人生の時間にも限りがあるわけですから、将来の展望とは別に、日常的には、そう多くはない同志的な方たちと協働することにより、少しでも納得できる活動をしていければ良いなと思っています。

危惧する方も危惧される方も絶滅するなら、考えても意味がないかもしれません。
”さあ友よ、明日を悲しむのはやめよう。
人生のこの一瞬を恵みと思おう。
明日、この古びた宿を後にすれば、
我らは七千年前の旅人たちの仲間になるのだ。
- Omar Khayyam -

作成者: Az

アコースティックバンド Premier Ensembleのブログです。